空間は人が居て完成する
〜#02 ARIA 小池将之 〜
空間は人が居て完成する
〜#02 ARIA 小池将之 〜

人の“居心地”のつくられ方を探るLIVES。今回は、ARIAの統括マネージャー、小池将之の家に訪れました。

17年前、ARIA(当時は「有吉家具店」)に就職した小池。デザインが好きで地元でそういう仕事ができないかと、探してみつけたのが有吉家具店でした。
次の年、結婚を機にかつての祖父母の家に住みはじめてから、現在では家族4人(夫婦、子2人)で暮らしています。

小池にとって新しい仕事や結婚生活は、この家とともにはじまりました。彼好みのデザイン家具と、家族それぞれのために置かれた家具。どちらも同じ場所で年月を経て、家族の居場所を作り上げています。

祖父母から引き継いだ家

―この家に住むことになった経緯など聞かせてください。

小池
すぐ近くに実家があるんですが、祖父母が隠居していた家なんです。ふたりが亡くなって10年くらい空き家だったのを引き継ぎました。
リノベーションには設計士さんはいなくて、電気屋兼設備屋さん、大工さんひとりのみ。あとは僕の行き当たりばったりの知識であれこれお願いして。
当初知識もなく、予算とのせめぎ合いだったんですが、「キッチンだけは奥さんのしたいようにした方がいい。口を出すと一生言われるで」と大工さんに言われました(笑)

―キッチンはどのように決めましたか?

砂里(さり)さん(奥さま)
いろいろ迷ったんです。木にするか、アルミにするか…。
オーブンはビルトイン。あとは食洗機もつけてもらって、収納の多さもポイントでした。
そしてアイランドキッチンだと、子供も見られるし、自分もテレビをみながら料理できるし、いいなと。

小池
広いリビングダイニングにしたかったので、キッチンの配置はここしかなかったんですけど、“キッチンゾーン”ができてしまったのが、ちょっと残念。部屋と一体化させたかったんです。

―ご自宅のお気に入りの家具はどれでしょうか?

小池
僕はミッドセンチュリー時代、とくにイームズが好きで。彼はデザインに対して独特の哲学を持っていて、その考え方も好きなんです。
このDCMという椅子は10代の頃から手に入れたいと思ってて、結婚する時に買いました。イームズデザインの真骨頂だと思います。

小池
今座っているのは子どもたちの椅子。赤いのは里朱(「りしゅ」長女)、黒いのは千樹(「せんじゅ」長男)の椅子です。里朱が中学校入学のときに買いました。どちらも僕の好きな椅子ですが、世代を超えて使えるクオリティがあるので、一人暮らしの時や嫁にいく時に持っていって、そのまま自分たちの子どもに引き継いでいってもらえたらいいなと思っています。

小池
あとは、このイームズシェルチェア、もらったものなんです。
16年前、近所の畑の中にゲートボール場があって、そこの休憩所にこの椅子を見つけて。
「屋外に?あれ?」と思って確かめたら、なんとハーマンミラーのロゴが入っていたんです(笑)。
レザー張りのだったんですが、サビサビで、おじいちゃん達も知らずに使っているみたいでした。その後、ゲートボール場のオーナーに直接掛け合って、うちの椅子と交換してもらったんです。

シェルに貼ってあったレザーは全部剥がして2日かけて磨き、ボンド跡も取り、サビた足だけ交換しました。自分で作った感もあるし、ハードに使っても全然壊れない。

小池
家具の中でもとくに椅子に惹かれるんですよね。人間に対してこのサイズ感…。親近感が湧くんです。素晴らしい建築家やデザイナーは、必ずと言っていいほど良い椅子をデザインしているので、家具を選ぶ中では力を入れたいところです。

砂里(さり)さん(奥さま)
私はこのテーブル。一目惚れしました。毎日一生懸命拭いてます(笑)。

小池
天板が厚みのあるアルミなんです。ディズニーランドのアトラクションを作っている鉄鋼会社が制作した天板に、家具の木工職人がグラインダーで木目のような筋をつけて仕上げていて、傷があっても目立たないんです。
冬は冷たいですが、熱伝導率がすさまじく、冷凍した肉は解凍プレートみたいにすぐ溶けます(笑)。

里朱さん
あっというまに溶けるよ(笑)。

砂里さん
そうそう(笑)。

普段、どう過ごす

―家ではどのように過ごされますか?

小池
普段は仕事から帰るのが、早くて午後8時。ひとりで夕ご飯食べていると千樹がやってきて夜食につまみ食いされます(笑)。
休日は家でゆっくりするってことはあまりなくて、ほとんど家にいないんです。ゆっくりゴロンとくつろげるっていう家ではないんですよね。居住性よりもデザインを優先しているから。だから家族でソファーの取合いですね(笑)。

砂里さん
私は1日の半分はキッチンですね。平日の日中もお仕事で外のキッチンにいるんですけど、帰ってからもご飯づくりでずっとキッチン。離れるのは寝る時くらいですね。

―お子さんたちは普段どこで過ごしていますか?

里朱は自分の部屋にもいきますが、ほとんどこのリビングで勉強していますね。

―やっぱり自分の部屋よりもみんながいるところがいい?

里朱さん
はい(笑)

カーテンでも椅子一脚でも、
あるべき空間で完成形が置かれたときは達成感

―この家の改築をはじめたとき、 小池さんはまだ ARIA で働きはじめの頃だったと思いますが、当時はどんな仕事をしていただんですか?

小池
僕が入ったころはまだ婚礼ダンスみたいな家具も取り扱っていて、結婚式を控えた奥さんの家から旦那さんの家に家具を運んだり、タンスを組んだり、半分以上が力仕事だったんです。

そのうち家具屋も、ファストファッション的な家具屋と、長く使えるものを扱う家具屋の二極化が進んで。ARIAは後者に進んでいきました。

―今はどんなお仕事が中心ですか?

飲食店や宿泊施設、商業施設など、家具だけではなく空間全体を提案する仕事が多いです。お店に立って接客販売もします。家具の配送や設置もするし、近所のおばちゃんに呼ばれたらカーテンの採寸や取り付けもやります(笑)。

仕事で1番達成感があるのは、カーテン1窓でもお店1軒分の家具でも、イメージしていた完成形に仕上がったときです。そして納品した家具の面倒を見て、経年変化を見ていくことも、お客様との関係性も含めて楽しい時間です。また、お客さんとも仲良くなってお友達を紹介してもらい、つながることも多く、仕事を通じた友人もたくさんできました。

空間は人が居て完成する

―小池さんにとっての居心地の良さって何でしょう?

小池
感覚的ですが、そこにある個々のものの良さだけではなく、重要なのは空間全体の話なのではないかと思います。
物が密にあるより、余白をいかにつくるか。昔はかっこいいものをたくさん置きたい、という気持ちがあったけど、何も置かない空間が大事なことに気づきました。心地よい空間を作るには、個々のアイテムを考える前に、まずは家具のサイズと余白を考えます。

あと、「人」は空間を考えるときの前提条件です。空間は家具だけではなく、人が居て完成します。飲食店だったら何を提供して、どんなお客さんが来るか、子どもは安全か、働く人がどう感じるか…。
うちであれば、家族4人がどういう生活をするかを軸にしてコーディネートするので、妥協もあります(笑)。ほんとはもっとシンプルに暮らしたい…(笑)。

それでも、使うものは椅子一脚にしても作り手の思考や歴史が感じられるものがいいし、物に宿っているパワーを感じたい。だから、僕はこれからもそんな家具を選んで、長い人生かけて使いたいですし、子どもから孫へと世代を超えて使ってくれたらたら幸せですね。おじいちゃんの家具最高やなーと、孫に言ってもらいたいな(笑)。

Aria
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